二つの大作『百年の孤独』と『族長の秋』の間に挟まる形で発表された短編集らしいですが、そもそもガルシア=マルケスの作品を読むのは初めてだったり。これを先に読んでよかったものか。
気怠いラテンアメリカの雰囲気の漂う不気味なファンタジーが多数収録されています。『幽霊船の最後の航海』、『この世でいちばん美しい水死人』など、題名からして不穏なものが多いです。
私が一番気に入ったのはやっぱり短編集のタイトルにもなっている中篇『無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語』。
最初の場面、14歳のエレンディラが独りでお屋敷の家事と祖母の世話をこなしている場面が強く印象に残っています。私のイメージだとエレンディラってメイドさんなんですよね。「はい、お祖母ちゃん」「分かったわ、お祖母ちゃん」っていう返事の仕方がなんだか妙に萌えますし。
亜熱帯にある古いお屋敷。
中庭の水槽の側につながれている、痩せた駝鳥の世話をするメイドさん、という図がシュールというかひどく幻想的で、脳裏から離れません。
(2007/08/01)
エレンディラ (ちくま文庫)