不浄の神に目をつけられた街が、汚物塗れの〝聖地〟に変えられてしまう様を描いたお話。
桐生氏の作品は「ごく個人的な怪談かと思っていたら、実は全世界が怪奇現象に見舞われていた」という、伊藤潤二の漫画を思い起こさせる展開が多くて結構好みです。
注目の汚物描写については、少々インフレ気味で作者の狙っていたナスティ・ホラーの効果が弱まっているんじゃないかと感じました。というか、私の大好きなジェフ・ヌーン『花粉戦争』とプロットが似ているせいで、どうしても比べてしまうのです。『花粉戦争』は花粉症の鼻水・唾液の描写のみにとことん拘っていたので異様に汚く感じたんですが、『川を覆う闇』はインフレしてグロというよりギャグになりかけているというか……。
実際のところ、この作品で一番不快感を覚えるのは汚物描写よりも、森志穂子や菊池氏の性格なんですよね。彼らの語ることって屁理屈というか、ただのワガママ……。
『夏の滴』もそうでしたが、桐生氏は不快なキャラを描かせたら天下一な人だと思います。
(2007/08/15)