確かにホラーとはちょっと違う〝不気味な物語〟が収録された作品集。何が不気味かというと、物語の展開が定型を大幅に外れて不自然だったり、結末に納得できる理由が無かったりする所。
例えば表題作『青い蛇』は……。
額縁の中の絵とガラスの隙間になぜか青い蛇が入り込んで動けなくなっていて、危ないからガラス越しにピストルで撃って殺してしまおうと父に言う「私」。
父は同意してピストルをとってくるのですが、部屋に入ったとたんに絵に向かって遠距離から銃を乱射するので「私」はとっさに伏せ、命の危険を感じながら父の行為に激怒します。
蛇は結局ガラスの隙間から逃げていってしまう……。
『青い蛇』はこれだけの話なのですが、父の行動の理由や青い蛇の意味について全く語られないのでどうもすっきりしないものを感じてしまいます。この不安感が著者の作品の特徴なのかなと思いました。計算された不自然さ、というべきでしょうか。
展開が不自然という点では、吸血鬼譚のようなのに何かがおかしい『ベルンカステルの墓場で』も印象的でした。
(2008/04/06)