表題作は第12回日本ホラー大賞の受賞作。
寄り道に訪れた古い友人の家で歓待され引き止められているうちにどうしても出られなくなって、ついにはそこの住人となってしまう、というモーリス・ブランシュの『アミナダブ』のような幻想小説で見られるテーマを官能的に描いた短編です。
他の話もそうですが、怖いという感じはしなくて、「不気味な舞台で喜劇をやっている」ような印象を受けます。
表題作は徹底したサイコホラー(母親の狂気と家庭内支配が生んだ家族宗教の話)として描いたらかなり怖い話になったと思うのですが、ヘンテコな超常現象が起こるために恐怖がユーモアに転化されている感じです。
選評にもありましたが、落語が好きな人にオススメな短編集かも。
(2008/08/25)