第13回ホラー小説大賞の長編賞作品。設定からジュブナイル・ホラーかと思ったら、今まで読んだことがないようなすごく変な小説でした。
お話は小学五年生の『僕』が、年の近い従姉の紗央里ちゃんの家に父と一緒に泊りがけで遊びにいくところから始まります。が、紗央里ちゃんの家は何か様子がおかしい。
まず叔母さんが血まみれのエプロンで出迎えますし(料理中だったと言い訳する)、紗央里ちゃんは突然家出したと言われて、会う事ができない。家全体からはなんともいえない腐臭が漂ってくる。
不審に思いながらもてなしを受けていた『僕』は、ふとしたことで洗濯機の下に千切れた指が落ちているのを見つけてしまう……。
この小説が変なのは登場人物に全然危機感が無いところなのですが、その点がものすごく気持ち悪く感じます。
この前読んだ同賞受賞作『余はいかにして服部ヒロシとなりしか』はユーモラスという表現が的確でしたが、こちらはギャグ漫画のような描写が逆に気持ち悪い。ところどころ物語世界全体が歪んでいるような、妙な擬音が入るところも不気味ですし。さらに終盤は登場人物が突然入れ替わっているようにも感じてしまう。(父と叔父さん。お姉ちゃんと紗央里ちゃん)
なんというか、怪談『牛のくび』や『見たら死ぬ呪いのビデオ』みたいな感じで、この話の内容が怖いというより、この小説の存在自体が呪われているような印象を受けてしまいます。
こういう感覚は小説ではなかなか味わえないことを考えると、かなり凄い作品なのではないでしょうか。
天下の角川が出してて、作者名がちゃんと出ているからわりと安心感がありますが、出所不明の怪文書としてこの作品を読んだら相当な戦慄を受けてしまうような気がします、、、
(なんとなく、ぴろぴと氏の動画作品に近い印象を受けました)
(2008/10/26)