私は大和人じゃなくて琉球民族なんですよ。でも育ちはほとんど中国地方なので、なんちゃって沖縄人というかなんというか、、、
子供の頃はそれほど意識していなかったんですが、成人してから沖縄の本家の行事に参加したりすると、土着文化みたいなものをビシビシ感じてしまったり。
そういう理由もあって、池上永一氏の描く沖縄ファンタジーは大好きです。
本作は若いシングルマザー津奈美が、産婆のオバァにまじないをかけられて見えなくなってしまった息子を元に戻すために、呪い返しの儀式に奔走するお話。
新月の日に掘られた井戸に飛び込んで〝陰〟の世界に入り、他の人にかけられた〝七つの願い〟を集めると息子を元に戻せるという、どこかのRPGのイベントみたいな儀式なのですが、実際、途中で同じ目的を持ったライバルと対決したりとRPGみたいな話の進み方をします
悪い意味ではなく、上質のエンターテインメントとしてワクワクしながら読めます。今や懐かしの電撃「ゲーム小説」大賞のコンセプトをとことん進化させたら、本作のような形に行き着くんだろうなあと考えたり。
中盤までは笑ってしまうような展開が続くんですが、津奈美が自分の息子のために、小学生の千佳子から「想像力のある子に育って欲しい」という願いを奪ってしまう所からじわじわと黒い展開が広がり始めます。
千佳子は小説の最初の頃からチョイ役的に出てきて、類まれな妄想力で『秘密倶楽部』という少年探偵団モドキの仲良しグループにB級カルトな話題を提供し続けている、なかなか面白い子なのですが、「想像力のある子」の部分を津奈美に奪われたことで、妄想する力を完全に失ってしまいます。
そのせいでネタの源を失った秘密倶楽部は解散してしまい、千佳子自身は日常から刺激を見出すことすらできなくなってしまいます(『こんなんじゃない! こんなのあたしじゃない!』と叫ぶところは不憫で仕方がない、、、)。
しかし、これでもまだ序の口。以後、さらに衝撃的な展開が待ち受けています。前半/後半の雰囲気のギャップがかなり激しい作品。一読の価値はあります。
(2008/10/12)