幻想的な現代ファンタジィを描かせたら天下一のジョナサン・キャロルの短編集。
「学校や会社で普通に過ごしている夢」とか「通勤・通学する夢」みたいな感じで、一見現実的なんだけれど、何かヘンな世界を描くのが得意な作者です。
この短編集で印象に残ったのは『フローリアン』と『砂漠の車輪 ぶらんこの月』。
『フローリアン』は不治の病で動くことすらできない幼い息子のために、父親が息子が元気に遊びまわっている理想の世界の小説を書いて、息子に聞かせようとする話。息子が死んでしまった後も、父親は小説を書き続け、「息子は小説の中で生きている」という歪んだ想いを持つようになってしまい……。最後は何が現実なのか、息子は本当に死んだのか、生きているのか、分からなくなってきます。
『砂漠の車輪 ぶらんこの月』は三ヵ月後に病気で失明してしまうことを知ってしまった男の話。
残りの90日間で男は「絶対に忘れたく無いもの。生涯記憶に焼き付けておく景色・人物」を10だけ選んで写真に撮って、失明した後の慰みにしようと考えます。そうして撮った最初の写真に写っていたものは……。
この話のテーマについてはいろいろ考えてしまいます。あと90日後に目が見えなくなるとして、自分だったら何を見て、何を覚えておこうと考えるか、、、
(2008/12/30)