『異次元を覗く家』 ウィリアム・ホープ・ホジスン

以前読んだ海洋ホラー『夜の声』の作者の長編です。

アイルランドの荒野に建つ古城の廃墟から見つかった、異常な内容の手記を紹介する、という形式の物語になっています。
手記を書いたのはかつてその城を購入し、妹と一緒に隠遁していた老人。手記には、ある日、深宇宙の果てにある異様な世界・・・怪物と邪神が跋扈する異世界・・・のことを夢に見てから、異世界の怪物が実際に城に攻めてくるようになった、という内容がつづられていました。

でも、これがちょっとおかしくて、怪物を見ているのは手記を書いた老人だけらしく、彼と一緒に住んでいる妹は、怪物よりも、怪物を追い払おうと虚空に銃を乱射し雄叫びをあげる老人を恐れているような……?

こんな感じで、『ねじの回転』のような幽霊妄想サイコホラーなお話から始まるのですが、それが物語中盤からがらっと雰囲気が変わってしまって、びっくりするような展開が待ち受けています。

密室殺人ミステリーだと思っていたら、いつの間にか魔王と戦うヒロイックファンタジーになっていた、というくらいジャンル転換が激しくて、変な意味で新鮮な読書感でありました。

描写そのものは非常に巧いので、ホジスンの描く静かで不思議な異世界にどっぷり没入できること間違いなしです。

(2010/03/13)

投稿者: shirone_koma

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