『巡礼者たち』 エリザベス・ギルバート

田舎のカウガールの話があるかと思えば、中央青果市場で働く男を描いたプロレタリア文学っぽい話まで かなり幅広いタイプの作品が収録された短編集です。
面白かった短編を二つ紹介してみます。

『エルクの言葉』
雪深いオハイオ州の山小屋に住むジーン母子と、そこに引っ越してきた自然派かぶれの都会人一家の話。
都会人の父親がエルク(大鹿のことらしい)を鹿笛で呼び寄せて交流しようとするのですが、やってきたエルクは明らかに縄張りに入ってきた人間と対決しようとしている様子で、都会人一家の無神経さに怒りを覚えるジーン、という構図。
とにかく凛とした硬質感のあるエルクの描写が美しく、都会人一家の滑稽さが際立って見えます。

『あのばかな子たちを捕まえろ』
最初はウェイトレス姿で「~ですわ」「なにごとですの」とお嬢様言葉でしゃべるマージに萌えるだけの短編かと思ったのですが、中盤から後半にかけて凄い展開になります。
嵐の真っ只中に海に泳ぎに行けばどうなるか(しかもアルコールをしこたま飲んで)、もう明白すぎるほど明白なのですが、実際に泳ぎに出かけて予想どおりの結果になるマージ他男女四人の姿を淡々とつづる作者の筆に脱帽です。タイトルの意味が良く分かります。


(2006/10/12)

投稿者: shirone_koma

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