巫女さんシューティングゲームとは関係ありません。
フランスの女性作家が日本や中国の古典を題材にした短編が収録されています。
注目はやはり『源氏物語』の欠番『雲隠』の章を想像して描いたと思われる『源氏の君の最後の恋』。老衰し、出家隠遁した光源氏が出遭う、最後の恋の話です。
基本的には(訳者の多田智満子氏による修正もあってか)、日本の古典訳としても全く不自然でない文章と内容になっていますが、最初の一文だけ西欧の王族列伝みたいな雰囲気があって、なかなか新鮮です。
“アジアに名をとどろかせた最大の誘惑者たる源氏の君は、~”(P67)
光源氏も他国からみたら確かにこんな感じかなあと思えます。
こういう日本史を世界史的に描くノリは、ファンタジーノベル大賞受賞者の宇月原晴明を思い起こさせるものがあります。
“彼(信長)のような日本の、そのまた取るに足りない小国の王子にとって、~” (宇月原晴明『信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』 P5)
※ ※ ※
それにしても、日本人が古典西欧を題材にした小説を描いた場合、西洋の人にとってどれくらい違和感なく受けとられているものなのでしょうか。
本作でも、『註※こんな人物は(源氏物語に)いないはず』なんて書かれているのを見ると、やっぱり微妙な部分をつかみ損ねていたりするのかなと考えてしまいます。
(2009/01/26)